エルゴートは流暢な日本語で自身、そして共演者の役柄と作品概要を丁寧に説明。渡辺については「レジェンドと一緒に仕事ができてうれしかった」と振り返る。初めて観た渡辺の出演作は『インセプション』(10)で、表情と声がすばらしいと大絶賛。続けて『硫黄島からの手紙』(06)を挙げ、「とても感動的な作品でした」と感想を伝える。次々と渡辺の出演作を挙げ、褒め続けるエルゴートに対し渡辺が「この作品に触れてよ!」とお願いする場面もあった。
伊藤については「とてもウマが合った」とのこと。エルゴートは伊藤の故郷を訪れ、毎日一緒に温泉に入り、伊藤の家族と食事をし、伊藤の母の手料理も食べたと報告。さらに「岐阜では山にものぼり、新年には一緒に初詣をしました」と仲良しエピソードも披露。笠松については「とてもクールな役だけど、感情をあらわにするシーンもあります。笠松さんの演技はとても魅力的で、一度観たら絶対好きになるはずです!」と大絶賛していた。
菊地については「とても素敵な演技をする人」とニッコリのエルゴート。菊地とエルゴートの間に座る渡辺のほうに視線を向け、「謙さんの演技は完璧ですが、凛子さんのほうが好きです!」といたずらっぽく微笑み、会場の笑いを誘った。山下については「一緒のシーンはなかった」と残念がるも「すごくカッコよくて、誰から見てもイケメン。今回のホストのキャスティングは完璧です」と太鼓判を押した。
菊地は「自分のことで精一杯でした」と撮影を振り返る。「みんなに追いつくのが精一杯の現場でしたが、日本語を一生懸命勉強し、情熱を持って新聞記者を演じていたアンセルの姿がとても刺激になりました」と感謝。さらに、緊張でいっぱいいっぱいになっていた際にマン監督から「しっかりして、君は女優だよ」という言葉をかけられ「そうだ、がんばんなきゃ」と覚悟を決めて現場に挑むようになったことを明かす。緊張がほぐれてからは毎日が新鮮に感じ、「とてもいい経験のできた現場でした」と満面の笑みを浮かべた。
会見中、ほぼ日本語で対応するエルゴートを見て、冒頭のあいさつで声がうわずったことを振り返り「ちょっと自分が情けなく感じてしまった」と苦笑いした伊藤。マン監督とのオーディションを振り返り、「最初は緊張よりもマン監督に会えるうれしさが上回っていました。2回目、3回目と会うなかで、もうすぐ役が手に届くと思うと緊張してしまう自分がいて…」と十分なパフォーマンスができない状態だったことを明かす。そんな伊藤を救ってくれたのは、尊敬するマン監督の言葉だったという。「(オーディションのビデオに映っていた)エネルギッシュな英明はどこにいったんだ?ドアから入ってきて、(オーディションの)部屋を去るまでに一瞬でも輝く瞬間があればいいんだ」とマン監督からアドバイスされた伊藤は、去り際に「See you on set!(現場で会おう!)」と言われて「選んでもらえた」とホッとしたそう。そのときの言葉が宝物になっているとしみじみ語っていた。
笠松は「楽しく、激しく、ときには過酷なシーンなど、いろいろなシーンに参加でき、とてもエキサイティングな現場でした」と笑みを浮かべ「この気持ちに当てはまる日本語が見つかりません。学ぶことも多く、当時自分が持っていたコンプレックスや将来への不安など、すべてのネガティブな感情を監督たちが取り除いてくれたので、芝居に集中することができました」と感謝を伝えた。この現場の経験は自身への「プレゼント」だと表現し、自分も誰かの人生が好転するようなきっかけを与えられるような人になれるよう、がんばろうと思ったことも明かしていた。
「外国から見た東京はこんな風に見えるんだと学べた」と話した山下は、作品から東京、そして日本を学んだことに触れ、「いろいろなカルチャーが一つの現場に混合していましたが、いい作品を作るぞという情熱は世界共通だと思いました」と微笑む。さらに「カッコ悪くても、ミスがあってもいい。ありのままの自分を認めてもらえた気がしてうれしかったし、心地よかったです」と振り返り、現場での1秒1秒を噛み締めていたこと、そして、渡辺や伊藤との久しぶりの共演、エルゴート、笠松、菊地ら尊敬できる人たちとの新たな出会いのよろこびも語っていた。
美しい日本庭園でのフォトセッションでは、タイトなスケジュールをこなすため、渡辺自らがホワイトバランスチェック用のスケッチブックを手にするなど、スタッフのように振る舞う場面も。コロナ禍以降、スターの来日が続々とキャンセルになっていたが、4月に入り映画、ドラマ関係の来日も始まりつつあるなか開催された、日米のスター集結の文字通り華やかな会見となった。
取材・文/タナカシノブ